のほほん備忘録

のほほんと過ごす日々に、ちょっとした備忘録

こうして出逢ったのも、何かのご縁

#12「夜は短し歩けよ乙女

 

今回のタイトルにピンと来た方は、森見登美彦ワールドの住人といえるでしょう。あるいは、同名タイトルのアニメ映画を観たことがある方でしょうか?

 

上記のタイトルは、アニメ映画『夜は短し歩けよ乙女』のキャッチコピーです。『四畳半神話大系』『有頂天家族』などで知られる人気作家・森見登美彦の代表作のひとつ。黒髪の乙女に片想いをする冴えない男子大学生の物語。あらすじは以下のとおり。

所属しているクラブの後輩である「黒髪の乙女」に恋心を抱く大学生の「先輩」は、「なるべく彼女の目に留まる」ことを目的とした「ナカメ作戦」を実行する日々を送っていた。個性豊かな仲間が巻き起こす珍事件に巻き込まれながら季節はめぐっていくが、黒髪の乙女との関係は外堀を埋めるばかりでなかなか進展せず…。

(映画.com『夜は短し歩けよ乙女』作品説明より)

なんとももどかしく、落ち着かない展開ですね(笑)。本作品を初めて知ったのはアニメ映画の方が先でした。主人公の声を星野源さんがやっていること、主題歌をアジカンが担当していること。これらがきっかけで作品を手にとりました。

 

最初は苦戦しました。なぜなら、主人公たちが独特な口調+やや早口での会話を繰り広げられていたから。しかも字幕なしなのでどうも聞き取りにくい。でも、なんか面白かったしもう一回観てみたくなる。2回目の鑑賞はTVでの放送で字幕付きでした。おおまかな流れを知ったうえでもう一回観てみると、その作品の面白さに気づきました。

その独特な喋り方が逆に個性的で強いインパクトを残しました。舞台が京都なんですが、京都って変わった人しかいないんか?なんて思うこともありました。そして、なかなか黒髪の乙女に振り向いてもらえない先輩の空回りっぷりがもはや喜劇。「それじゃ無理だろ」と思うことでも先輩は真剣です。「なるべく彼女の目に留まる」ことが目的なので、彼女の視野に自分が入っていればそれで満足だ、と私は解釈しています。

2回目の鑑賞から何回も見て、少なくとも合わせて3~4回は観ている気がします。それくらい好きなアニメ作品です。

 

しばらくしてから、今度は原作小説を読みたくなりました。森見さんの作品は『【新釈】走れメロス 他四篇』という短編小説を読んだことがあります。近代日本文学の名作5作品を現代版に置き換えてパロディ(新釈)したもの。どの作品も思わず笑ってしまうほどユーモラスに描かれていて、独特な森見ワールドの虜になりました。そんな彼の代表作を映画を観てから読んでみると、また違った面白さが出てきました。

小説では季節ごとのエピソードを「1年間の物語」として描かれているんですが、映画ではその4つを「とある日の夜」として描かれています。小説での「1年間の物語」として描くほうが分かりやすいし、「先輩」と「黒髪の乙女」の一人語りで展開していくので、同じ場面でも視点の移り変わりがあるので面白いです。映画での「とある日の夜」としての描き方もファンタジーっぽい非日常感があり、キャラクターたちも動きや表情があったりするので、感情がダイレクトに伝わります。ただ共通した感想は「京都は変わり者が多いのか?」ということでした。「黒髪の乙女」もなかなかの変わり者で、その意外性に驚きました。

 

「先輩」と「黒髪の乙女」は作品の中でいろんなキャラクターと出会い、交流を深めたり珍事件に巻き込まれたりします。良い意味でも悪い意味でも「ご縁」でつながっていくわけです。果たして「先輩」は「黒髪の乙女」を振り向かせることができるのか…。

小説も映画もとても面白いので、ここに書かせていただきました。これもなにかの「ご縁」なんでしょうね。